その先に想いを乗せる

日々雑感

今週土曜日は冬至。

冬至は一年でもっとも日が短いとされています。それは転ずれば翌日から夏至に向かって日が長くなるということであって、この寒くてつらい冬を少しでも前向きに過ごすための目標にもなりそうだなと勝手に思っています。

個人的にはどんなに早く暗くなろうと、いつまでも朝が暗かろうと、どんなに気温が低くても構いません。

問題は雪。というか雪片付けです。雪もどれだけ降ってもいいと思っていて(もちろん限度はあると思いますが)、雪片付けさえしなくて良ければ最高なんですけどね。

と書きながら、毎朝真っ白になっている景色を眺めつつ、そろそろ雪片付けが始まりそうと憂鬱な毎日です。

 

さて、今日は「その先に想いを乗せる」ということで書いてみたいと思います。

先日、患者 A さん(仮称)からあるお話を伺いました。

ざっくり書いてしまうと「丁寧な仕事ぶりが評価された」というものになります。

 

A さんはある工房で手作りの商品を作るパートさん。

仕事に就いて10ヶ月ほどが経過し、ようやく一人出勤でも問題ないレベルまでこれたといいます。

その A さんの目下の悩みが『もう少し生産量を増やしたい』というもの。

同じパートさんの中でも一人だけ仕事が遅く、生産量が少ないことがずっと気になっているそう。

ところが、最近になって職場の上司から『 A さんが作る商品は納入先でとても評価が高い』とおっしゃっていただけたと。その理由はミスがとても少なく、高品質であることだそうです。

逆に自分よりも生産量が多い、他のパートさんが納入する商品は細かなミスがあったり、商品価値が低いものが結構多く、納入先でも正直困っているとも。酷い時は納入された半分が使い物にならないこともあるそうです。

 

よく「量より質」と言われますが、まさにこのことを指していると思います。

たしかに他のパートさんと比べると生産量は7,8割程度しか納入できていませんが、結果として高品質な商品を提供することができています。

A さんの中でコンプレックスだった「生産量の少なさ」という悩みが解消されたわけではありませんが、今までネガティブに捉えることが多かった部分が見方を変えることでポジティブになることの解りやすい例だと言えるかもしれません。

 

それで A さんに ”いつも何を想って仕事をしているか” を尋ねてみたのですが、その回答に納得。

自分が作った商品を手にとってくれるお客さんのことを考えています

いつも不安気な A さんらしい回答といえばそうなのですが、A さんは丁寧に商品づくりをしている自覚はあるものの、自分に自信がないため「購入してくれるお客さんに失礼がないように」と気遣いながら仕事をされていました。

だからこそ、実際に手に取ってくれるお客さんに少しでも満足・納得をしてほしいからと、目の前にある作業のその先にいるお客さんに想いを届けられるよう商品作りに励んでいらっしゃいます。

生産量は他パートさんと比べたら少ないのは事実。だけど、品質にエラーが少なく、買い手が安心して購入できるものを作り出せていることも事実。

 

A さんの会社では「今日は時間内に◯◯個納入できたからヨシ!」というのは仕事の基本かもしれません。

しかし、◯◯個納入できたからといって、半分以上が売り物にできない状態だったら、それは単純に作業をしていたというだけ。

もちろん、パートタイムジョブですから作業時間に対する賃金は支払われますが ”半分以上が売り物にできない状態だった” ことを知ったパートさんは何を思うのか。

そんなの関係ない、私は時間内に規定数を作り納入したのだからと正論をぶつけるか、それとも仕事と呼べるものをいかに雑な想いで行っていたかに気づけるか。

多くは賃金欲しさに単純に労働(作業)をすることを仕事と呼びますが、A さんはその先にあるものに想いを乗せて労働されている。

購買者に喜ばれるのはどちらか。
それは正直解りませんが、解る人には伝わる想いというものは確実に存在しています。

誰かやっても同じ形、同じ量にするためにはオートメーション化が必要ですが、そこに ”想い” は込められません。

生産量は少ないかもしれない、人によってはそれがコンプレックスになるかもしれない、だけど作り手の想いは込められ伝えられます。

時短だのタイパだのと効率を優先するほうばかりに目を奪われがちですが、じっくり丁寧にそして想いを込め、仕事のその先にいる方々に気持ちを乗せることってとても大切なことだと思います。

 

小沼は開業前の修行時代から A さんと同じような気持ちで患者さんに接するよう心がけていました。

例えば、だんだんと年末が近づいてきて、当院にも今年最後の施術を求めて患者さんが来院されております。

「一年間、本当にお疲れ様でした」という、労いの気持ちを持ちながら施術することは当たり前であり、患者さんの心体が少しでも軽くなれば帰宅を待つご家族まで明るくなり元気になる……そんなところまで想いを乗せて施術に当たらせていただいています。

ただ、小沼の想いは「乗る」もしくは「乗せる」ものですので、その想いが強すぎることは厳禁。逆に負担になりかねません。

当日、目の前の患者さんの状態を把握しながら、悪影響にならない範囲で想いを乗せさせていただいております。イメージ的には背中をポンッと押す感じですね。

 

A さんのお話を伺いながら、気持ちは大事だなと改めて感じたある診療日でした。

年末29日まで診療は続きますが、どの患者さんにも重くならない程度に想いを乗せてお帰しいたします。

施術を受けた患者さんだけなく、そのご家族やパートナーの方も元気になるような、そんな想いを届けていきます。

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